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▼ 日程|2020.1.17[金]- 2.3[月]
▼ 会場|栞日 2F 企画展示室


美術作家であり、たくさんの詩やエッセイを残した永井宏さんの散文アンソロジー『サンライト』(夏葉社)の発売を記念して、永井さんのアート作品、関連書籍を展示販売します。初日前夜には版元である〈夏葉社〉の島田潤一郎さん、編集を担当した丹治史彦さんをお招きして、トークイベントも開催。「誰にでも表現はできる。ぼくたちの暮らしが作品になるんだ」とたくさんの人を励まし、没後もなお影響を与え続けている永井宏さんの作品と考え方に、ぜひ触れてください。


TALK|島田潤一郎 × 丹治史彦「新鮮な景色をさがして」

▼ 日程|2020.1.16[木]19:00開場 / 19:30開始(21:00終了予定)
▼ 会場|栞日 1F

▼ 対談|島田潤一郎(夏葉社)× 丹治史彦(信陽堂)

▼ 料金|1,000円 + one drink order
▼ 定員|30名
[予約優先]

▼ 予約|栞日
▽ TEL|0263-50-5967
▽ MAIL|info●sioribi.jp[●→@]
・ 件名|【予約】TALK「新鮮な景色をさがして」
・ 本文|氏名 / 人数 / TEL


以下、書籍『サンライト』の版元で、「何度も、読み返される本を」をテーマに掲げ、その宣言どおりの良書を世に送り続ける、ひとり出版社の先駆者、〈夏葉社〉島田潤一郎さんからのメッセージです。


『永井宏 散文集 サンライト』という本の巡回展を栞日さんで開催できることをうれしく思います。

永井さんがなにをした人か、というのを説明するのは難しいのですが、いま現在活躍している多くの人たちに影響を与えた人というのが、ぼくのなかで、いちばんしっくりきます。

この本の編集をしてくださったのは、2003年にアノニマ・スタジオを設立した丹治史彦さんですが、この時期、「クウネル」(2003年)や「天然生活」(2004年)など、生活をベースにした多くの書籍や雑誌が書店店頭で目につくようになりました。こうした本の登場で、店頭の風景は変わり、それまで男性中心だった書店の世界が女性の中心の場所へと変化していきました。

永井さんは、たくさんの言葉と著書、そして「サンライト・ギャラリー」の運営などをとおして、これらの本をつくった人たちに影響を与えました。その思想は要約すれば、「自分の暮らしを見つめ直すこと」であり、「ひとりひとりの暮らしそのものが表現になりうる」ということでした。こうした思想は安易にコピペされ、ビジネスの器に乗っかることで、消費され尽くしてしまったようにも見えますが、その源泉は、いつまでも瑞々しいです。

『サンライト』のこと、本づくりのことなどを、丹治さんとふたりでお話しします。ぜひお越しください。


続いて、書籍『サンライト』の編集を手がけ、今回の展示構成も担ってくださる、〈信陽堂〉丹治史彦さんからのメッセージです。


永井宏さんは、美術作家として活発に作品を発表してきた方ですが、同時にたくさんの詩や文章も残しました。神奈川の海辺の町で暮らしながら作品を作り続け、また自身で「サンライト・ギャラリー」を運営し、「誰にでも表現することはできる」「暮らしそのものがあなたの作品になるんだ」といいながら、たくさんの人に表現することを勧め、背中を押し、励まし続けた人でもありました。

ギャラリーを閉じたあとは各地でワークショップを開催し、小さなブックレーベルを立ち上げ、出版も手がけました。早くからポエトリーリーディングを主催し、自作の歌も歌いました。ワークショップからはたくさんの表現者が生まれ、2000年代になって花開いた「暮らし系」「生活系」のメディアの担い手たちの多くはそんな永井さんの活動に直接、間接の影響を少なからず受けていました。2003年に僕がはじめたアノニマ・スタジオはまさにそうでした。

2019年9月に出版された『サンライト』は、永井さんの残した8冊の本から26のエッセイを集めて編んだものです。少年時代の永井さんが過ごした東京、雑誌編集部にいたころに吸収した映画や音楽、喫茶店の文化。メディアの世界から距離を置き、海辺の町で身近な暮らしに視線を向けた表現を紡ぎ出すまで。永井さんが提唱した「ネオ・フォークロア」という考え方への道筋がぼんやりと浮かんでくるような構成を目指しました。

「ネオ・フォークロア」とは、自分たちの暮らしの中から表現が生まれる、という考えに基づいて永井宏さんが提唱したことばです。かつて、人々が土地に根ざした暮らしの中で作りだした器や布が、その後「民藝」という名前を得て、親しげな美しさをもって私たちに語りかけてくれるように、私たちの日々もまた、そのような美しさ、愛おしさを生みだす土壌になるはずだ。そのためにも、どんなつまらないことでいいから、暮らしの中から小さなひかりを拾いあつめることを続けよう。そうして形作られたもの、集めたものを「ネオ・フォークロア」と名づけよう。永井さんが言い続けていたことは、このようにまとめることも出来ると思います。

ものづくりの呼吸が息づく松本の街で、永井さんの作品を見ていただく機会をいただいたことに感謝いたします。1月16日のトークでは、島田さんの新著『古くて新しい仕事』にも触れながら、永井さんの残した仕事、伝えようとしていたことについて、おしゃべりしたいと思います。


永井宏(ながい・ひろし)

美術作家。1951年東京生まれ。1970年なかごろより、写真、絵画、ビデオなどによる作品を発表。80年代は「BRUTUS」(マガジンハウス)などの雑誌編集に携わりながら、表現活動を続ける。1992年、神奈川県の海辺の町に転居。葉山で「サンライト・ギャラリー」を開設し生活に根差したアートを提唱し、創作を続ける。雑誌「12 water stories magazine」を創刊、、現在の「ひとり出版社」の走りとも言える小さな出版レーベル「WINDCHIME BOOKS」を立ち上げる。2011年4月12日、59歳で永眠。主な著書に『雲ができるまで』(リブロポート)、『カフェ・ジェネレーションTOKYO』(河出書房新社)、『夏の仕事』(メディアファクトリー)、『ロマンティックに生きようと決めた理由』『モンフィーユ』(アノニマ・スタジオ)など。

島田潤一郎(しまだ・じゅんいちろう)

夏葉社代表取締役。1976年高知県生まれ。アルバイトや派遣社員をしながら海外を放浪した後、編集者としての経験を持たないまま2009年9月、ひとり出版社の夏葉社を吉祥寺で創業。スローガンは「何度も、読み返される本を」。『昔日の客』(関口良雄著)、『星を撒いた街』(上林暁著)など絶版となっていた名著の新装復刊からオリジナル作品まで、数多くの美しい本をひとりで手がける。また、ひとり出版社の雄として、ちいさな出版社の設立を目指す人々に勇気と力を与えている。著書に『あしたから出版社』(晶文社)、『90年代の若者たち』(岬書店)がある。

丹治史彦(たんじ・ふみひこ)

編集者、信陽堂代表。1967年宮城県塩竃市出身。リブロポート、メディアファクトリーを経て2003年アノニマ・スタジオ設立。「ごはんとくらし」の本やイベントを手がけ、永井宏さん、高山なおみさん、細川亜衣さん、内田真美さん、早川ユミさん、中川ちえさんらの本を出版。2009年、屋久島に住む。2010年、信陽堂編集室として活動を開始。2011年より滋賀県近江八幡市の菓子舗「たねやグループ」の広報誌『ラ コリーナ』のディレクションを担当している。