甲斐啓二郎 写真展「手負いの熊」

▼ 会期|2021.9.4[土]- 9.26[日]
▼ 会場|栞日 2F 企画展示室

【ONLINE】ギャラリートーク「手負いの熊」

▼ 日時|2021.9.7[火]21:00 – 22:00
▼ 対談|甲斐啓二郎[写真家] × 菊地徹[栞日代表]
▼ 料金|無料
※ 公開URL|https://youtu.be/d2Jx_gnYPhE


昨日 9.4[土]から〈栞日〉2F企画展示室では、写真家・甲斐啓二郎さんの写真展「手負いの熊」を開催しています。

甲斐さんとは、今回の展示が「はじめまして」。広島の書店〈READAN DEAT〉店主、清政光博さんが、「いま展示している写真家さんが巡回先を探していて」と、お声かけくださったことがきっかけでした。

甲斐さんは、世界各地の伝統的で格闘的な祭事を撮り続けていて、昨春、国内外あわせて5つの祭りを収めた写真集『骨の髄』を発行しました。その祭りのひとつが信州・野沢温泉の「道祖神(どうそじん)祭り」で、その光景を撮影した作品群「手負いの熊」を、長野県内でも発表したい、とかねてから考えていらしたそうです。

県外出身者とはいえ、信州暮らし10年目の身で、お恥ずかしながら、僕はこの野沢温泉の「道祖神祭り」について、これまでその存在だけしか認知できていませんでした。甲斐さんが展示室のエントランスに掲げてくださった言葉をお借りして、この祭りのこと、そして写真展のことを、ご紹介します。


「 手負いの熊 – Wounded Bears- 」

長野県下高井郡野沢温泉村で、毎年1月13日から15日に行われている道祖神祭りのクライマックス「火付け」を撮影したものである。道祖神祭りは、江戸時代後期にはすでに盛大に行われていたとの記録が残っている。「三夜講(さんやこう)」と呼ばれる、厄年の42歳に連なる、42歳・41歳・40歳の3学年の男衆と、厄年の25歳の男が加わり、祭りのために、真冬の凍てつく空気のなか、夜を徹して、社殿を造り上げる。「火付け」の時刻になると、上記「三夜講」以外の村民の男衆が、社殿に火を付けるため、松明を手に勢いよく飛び込んでいく。それを、ただの身ひとつで社殿を火から守るのが、厄年の25歳の男衆の役目だ。彼らは、過酷な試練を与えられ、それを乗り越えなければならないのだ。これは、野沢温泉で産まれた男の通過儀礼である。


道祖神は、全国に広く祀られている民間信仰の神。災厄の侵入を防ぐとされ、ここ信州ではその姿が刻まれた石像が村境や辻に置かれている景色をよく目にします。また、子どもの成長や子宝を願う対象にもなっています。道祖神祭りは、初子を祝い、厄年を祓い、良縁を願いながら、小正月に正月飾りを焼く行事で、全国的には「どんど焼き」などの呼称で親しまれているものが、野沢温泉では火を巡る攻防を伴いながら、壮大な規模で行われているものです。

展示室には、迫力あるオリジナル10点が展示され、『手負いの熊』単体の作品集と、同作品群を含む写真集『骨の髄』、並びにそのポストカードセット(5枚1組)を販売しています。書籍とポストカードについては、〈栞日〉オンラインストアからもお求めいただけます。

そして、あさって 9.7[火]21:00 からは、甲斐さんご本人に僕がオンラインでインタビューする機会をいただきました。なぜ野沢温泉の道祖神祭りに関心を寄せたのか、そもそもこのような民俗的で格闘的な祭事を撮影の対象に定めたのはどうしてなのか、訊いてみたいことが山盛りです。遠隔でのギャラリートークは初めてなので、不手際があるかもしれませんが、タイミングの合うみなさんは、ぜひリアルタイムでご一緒いただけたら。なお、同インタビューは〈栞日〉YouTubeチャンネルでアーカイブしますので、当日ご都合のつかないみなさんも、後日ご覧いただけましたら、幸いです。

写真展『手負いの熊』は、9.26[日]まで。お近くのみなさんは会場で、ご遠方のみなさんはオンラインで、それぞれご鑑賞いただけたら。どうぞ、よろしくお願いします。