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来週末 3.14[土]15[日]に予定していた、扇谷一穂さんの「ポートレートドローイング」は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、止むを得ず開催を延期します。既にご予約いただいていたみなさま、これからのご予約を検討してくださっていたみなさま、申し訳ございません。

事前にお申込みいただいた上で、ひと組ずつ順番にご来店いただき、ポートレートを描いてもらう、というスタイルの受注会で、所用時間も約30分間と短めなので、状況としては小店の喫茶をご利用いただくシチュエーションと大差ない、と考え、予告どおりの開催を考えておりましたが、ここに来てますます厳しくなっている「イベント」というもの全般への風当たりの強さを目の当たりにして、改めてご本人と話し合いを重ねて参りました。

そんな中、扇谷さんから「(この日程で開催することを選んだ場合)私自身がどうしてもざわざわしてしまう」「自分が不安定な状態だと相手の方にも申し訳ない」という声がこぼれました。その日そのときの印象を水彩の線と色で一気に描きあげる扇谷さんの「ポートレートドローイング」は、その瞬間に彼女の瑞々しい感性が遺憾なく発揮されることが、きっと何よりも大切です。アーティストとしての正直な声を聴いたとき、僕は「やめよう」と決めました。

と同時に、彼女だけではなく、日本中の音楽家や芸術家がその才能を封じ込めざるを得ない状況を生み出している、この世間の気分を恨めしく思ったのも事実です。このような状況下だからこそ、一枚の絵やひとつの曲が、ひと筋の光となって塞いだ心に注ぎ込み、僕らを救ってくれるはずなのに。

この告知に添えた少女の似顔絵は、今回予定していた開催日が七十二候「桃始笑(ももはじめてさく)」にあたることに因んで、扇谷さんが提案してくれた「季節の一色」で描く「桃色のポートレート」のサンプルです。人間社会の騒動を脇目に着々と進みゆく季節の中で、何色のポートレートを描く時期になったら改めて開催日のご案内をできるのか、いまはまだ分かりませんが、世の中が平熱を取り戻したら、必ず改めて開催します。そのときは、どうぞ、よろしくお願いします。


扇谷一穂[おおぎや・かずほ]

東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2000年「Spiral Independent Creators Festival(SICF)」に出品。入選を機に制作を始める。鮮やかな色彩と凛とした人物像で注目を集め、2004年初の個展を開催。以降、全国で展示を行う。2018年〈gallery芝生〉での個展「あの人の声」会場で開催したポートレートドロ ーイングが好評を得て、以降各地でポートレートドロ ーイングを始める。また、シンガーソングライターとして、今までに4枚のアルバムをリリース。ライブ、展示、朗読やワークショップなどの活動を通して、絵画と音楽、ふたつのスタイルで心に広がる風景を自由に表現している。