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松本の街を歩いていると、銭湯が点在していることに気づく。こんな小さな街に銭湯のある風景が残っていて、豊かだな、と素直に思う。今回お話を伺った〈菊の湯〉もそのひとつ。代表の宮坂賢吾さんによると、現在も9軒の銭湯(注)が市内で営業中だという。それでも、自宅に風呂のないことが一般的だった昭和30年代には40軒以上あったというから、この街にずっと暮らす人にとっては、ぐっと少なくなった印象だろう。〈菊の湯〉の歴史は長く、その起こりは定かではないが、100年近く遡る可能性もあるそうだ。もともと材木屋を営んでいた祖母が、職人さんの労をねぎらうべく、廃材を燃やして風呂を炊いたのが始まりだという。昭和初期に一般に開かれてからは、市民や北アルプスから降りてきた登山客に街の風呂屋として親しまれ、今に至る。駅前大通りを挟んで〈栞日〉のほぼ真正面にあるから、常連さんが決まった時間にやってくる様子を日々眺めているのだが、中にはオープン30分前から並んで井戸端談義に花を咲かせるご近所さんたちの姿も。もはや生活の一部なのだ。淡々と同じリズムを街に刻む〈菊の湯〉を前に、背筋が伸びる思いである。

(注)9軒の銭湯|全国浴場組合に加盟している公衆浴場

text|Toru Kikuchi
photo|Kokoro Kandabahyashi